
デザイン原則とは? AI時代にこそ見直したい、チームの指針

迷わないための「デザイン原則」
Figmaの進化が止まりませんね。
「Figma Make」のようなAI機能が当たり前に使えるようになり、プロンプトひとつで“それっぽい”UIが生成できる時代になりました。
2026年現在、もはや「綺麗な画面を作ること」自体のハードルは劇的に下がったと言えます。
けれど、現場ではどうでしょうか。「このAI案と、こっちの手作業案、どっちにする?」という議論で、意外と時間を浪費してはいないでしょうか。
簡単に作れるようになったからこそ、「なぜその形なのか?(Why)」を語る力が、これまで以上に求められています。
今日は、そんな迷えるチームのための「デザイン原則」についてお話しします。
デザイン原則とは「判断の物差し」です
デザイン原則と聞くと、AppleのHuman Interface Guidelinesのような、美しく整えられたドキュメントを想像するかもしれません。
しかし、本質はそこではありません。
デザイン原則とは、迷ったときに立ち返る判断基準のことです。
スタイルガイドが「ボタンの角丸は4px」というHowを定めるものだとすれば、デザイン原則は「ユーザーに親しみやすさを感じてもらう」というWhyやWhatを定めるもの。
「A案はかっこいいけど原則に反するね」「B案は地味だけど原則通りだね」といった具合に、チームの共通言語として機能します。これがあるだけで、不毛な好みのぶつけ合いは驚くほど減るのです。
変わらないもの、新しく見るべきもの
では、具体的にどんな原則を持つべきなのでしょうか。2026年の視点から、普遍的なものとモダンな観点を整理してみます。
1. ユーザーに見えているか
古くからの鉄則ですが、やはり最重要です。
システムが今何をしているのか、ユーザーが知りたい情報はそこにあるか。
AIが裏側でよしなに処理してくれる時代だからこそ、「今、何が起きているか」をユーザーに可視化する誠実さが、信頼に直結します。
2. 倫理的で明確か
これは近年の大きなトレンドですね。
ユーザーを欺くようなダークパターンは論外ですが、AIのリコメンドも「なぜそれが表示されたか」が不透明だと不信感を生みます。
「迷わせないための情報設計」はこれまで通り重要ですが、そこに正直であることを加えたいところです。
3. 包括的であるか
アクセシビリティは、もはや「余裕があれば対応する」ものではありません。
多様なデバイス、多様な状況(移動中、音声操作中など)での利用が当たり前になった今、最初から「誰でも使える」を前提に置くことは、ビジネス上の機会損失を防ぐ意味でも必須と言えます。
国内のデザイン原則から学ぶ
海外だけでなく、私たちと同じ文化的背景を持つ国内企業の原則も非常に参考になります。
freee
「マジ価値(本質的な価値)」を届けるために、業務ツールであっても遊び心や気持ちの良いリアクションを大切にする。それが結果としてユーザーの生産性を高めるという、独自の哲学が込められています。
SmartHR
SmartHR Design Systemでは、4つの「パーソナリティ」を掲げています。「わかりやすく、親しみやすい」という言葉選びそのものが、複雑な労務手続きをハックするSmartHRさんのプロダクトの空気感を体現していますよね。
Ameba
Amebaのデザインシステム「Spindle」で定義されている「Amebaらしさの3原則」です。10年以上続く巨大なコミュニティサービスとして、ユーザーに対する姿勢(Attitude)を原則の中心に据えている点が印象的です。
デジタル庁
行政サービスだからこそ、アクセシビリティが最優先事項として掲げられています。この「前提条件」としてのデザイン原則は、公共性の高いサービスを作る上で非常に参考になります。
小さく始め、現実に合わせる
理想は分かったけれど、実際どう作るの? と思われますよね。
ここで、強調したいポイントがあります。
大層な見た目は必要ない
立派なWebサイトや、美しくレイアウトされたPDFを作る必要はありません。
Notionの1ページ、Slackのピン留めやREADMEの数行でも十分です。
「形」にこだわるよりも、「小さくはじめる」ことがなにより大切です。
たとえエンジニアとデザイナーだけの2人のチームであっても、「私たちは『速さ』と『丁寧さ』、どっちを優先する?」と合意形成しておく。
それだけで立派なデザイン原則の第一歩です。
現場の現実に合わせる
ここが実は一番重要かもしれません。
教科書通りにいかないのが現場です。
「原則では『分かりやすさ優先』だけど、今回のキャンペーンはビジネス的に『インパクト優先』で行こう」
そんな判断が必要な場面は多々あります。
- UI/UXの理想
- ビジネスの数値目標
- 決裁者の戦略的意図
これらがぶつかった時、原則をただの足枷にしてはいけません。
「今回は戦略的優先度が高いから、あえて原則を崩そう」と、意図を持って原則を破ることができるのも、原則があってこそなのです。
ビジネスを加速させるための投資として
私は執行役員という立場でもプロダクトに関わっていますが、経営視点で見てもデザイン原則は非常に良い投資だと感じます。
最大のメリットは意思決定の高速化です。
判断基準がクリアであれば、会議の時間は減り、リリース速度は上がります。
また、一貫性のあるプロダクトはユーザーに「人格」を感じさせ、長期的なブランド信頼として蓄積されます。
さらに言えば、「何を大切にするチームか」が明文化されていることは、カルチャーにマッチした優秀な人材の採用にも効いてくるのです。
まずは雑談から
デザイン原則に完成はありません。プロダクトのフェーズが変われば、大切にすべきことも変わるからです。
だからこそ、「正解」を探すのではなく、チームの「納得解」を持ち続けることが大切です。
難しく考えず、明日のランチやミーティングの冒頭で、こんな風に切り出してみてはいかがでしょうか。
「私たちのプロダクトって、何が褒められたら一番嬉しいんだっけ?」
そんな雑談から、頼れる指針が見つかるはずです。
デザインに関するご相談
株式会社CRUTECHでは、プロダクト開発におけるデザイン支援サービスを行っています。
今回ご紹介したようなデザイン原則の策定ワークショップや、UI/UXデザインのハンズオン支援など、チームの課題に合わせて伴走いたします。
「自分たちのチームにも指針が欲しい」「壁打ち相手になってほしい」など、お困りの際はお気軽にお声がけください。